ひとくちコラム
ドイツでは年間50万件の遺言が作成されている
連邦公証人協会が運営している遺言記録センターの「2023 年報告書」1によれば、2023 年の 1 年間に新たに登録された遺言書の数は 44 万 8600 件でした。その 87%が公正証書遺言、12%が自筆遺言です。同年のドイツ国内の死亡者数は 104 万人だったので、先ほどの遺言書の登録数はその半分弱にあたります。死亡者の情報は各地の住民局から遺言記録センターに伝えられますが、2023 年の死亡者の 61.4%に遺言の保管記録があったとのことです。
遺言記録センターに記録されている遺言数は 2023 年末現在、2360 万件です。これはドイツの人口(8480 万人)のほぼ半分に相当します。ドイツでは遺言を作成することが市民の間にかなり浸透していると言えそうです。
ちなみに、公正証書遺言の作成費用は、遺産総額が 10 万€(約 1,600 万円)の場合、273€(約 43,000 円)です。これに遺言記録センターの登録料など、若干の追加費用がかかります。遺産の総額が高くなるほど作成費用も高くなります。弁護士に相談した場合はこれとは別に相談料がかかります。つまり、公正証書遺言の作成にはある程度の費用がかかります。
ですが、公正証書遺言を作成しておくと、相続の開始後に土地登記や銀行預金の相続手続をおこなうことが容易になります。公正証書遺言によって手続をおこなえるため、遺産裁判所に相続証明書の発行を依頼するための手間暇を省くことができます。相続証明書の発行申請手続は弁護士に依頼することが大半ですが、その負担も省くことができるため、公正証書遺言を作成しておく方が節約になるケースも多いようです。遺言書がなく法定相続となる場合、土地の相続登記などのためには相続証明書が必要になります。公正証書遺言を作成する人が多い背景にはこうした事情も存在します。