ドイツ相続法情報室

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法定相続

国が相続人になる場合


誰も相続する者がいない場合は、国が相続人になります。被相続人の財産が国庫に帰属する、という点では日本の法律と同じですが、ドイツでは「国が相続人になる」ということを根拠として相続財産が国庫に帰属します。

法定相続人になる血族や配偶者が見つからない場合のほか、相続放棄によって法定相続人になる人がいなくなった場合も法定相続人が存在しないことになります。こうした場合、遺産裁判所は相続人を探す手続を開始し、指定された期限までに相続人の届出をおこなうよう公告します。ただし、遺産の状況からして公告の費用の支弁が不相当であると認められる場合は公告を省略できます。

相続人の調査方法は裁判所が決定しますが、裁判所は「遺産保護人」(Nachlasspfleger)と呼ばれる者に相続人の調査を委託することができます。

調査や公告にもかかわらず、相続人が見つからない場合、遺産裁判所は「相続人が存在しない」という決定をおこないます(1964 条)。この決定によって国が相続人になります。ドイツの相続法が適用される限り、被相続人の国籍がたとえドイツでなくても国が相続人になるというルールが適用されます。

「国が相続人になる」と書きましたが、具体的には、被相続人の死亡時の常居所地があった州が相続人になります(ドイツは連邦国家なので州も国とされています)。ただし、こうした常居所地が存在しない場合は連邦が相続人になります。

国は、相続を放棄するなどして相続人になることを拒むことは許されていません。ただし、国が相続人として相続債務の履行義務を負うのは、相続した積極財産の範囲内に限定されています1

なお、ドイツ民法には、日本の「特別縁故者」に該当する制度は存在しません。

[コラム] ドイツには相続人の探索業者がいる

国が相続人になる前に、遺産裁判所が法定相続人を探索しますが、ドイツには法定相続人の探索をビジネスとする事業者も存在します。彼らは遺産保護人からの委託や裁判所の公告をきっかけに探索に取り掛かります。古い公的書類を丹念にたどり相続人を探し出しますが、首尾よく相続人を探し出したときは、遺産の 1~3 割の成功報酬を受けるとされています。高いようですが、必ず相続人を見つけ出せるわけではないので、リスクの高いビジネスと言えます。

相続人の探索業は欧州では古くからある事業とされていますが、今もなお必要とされているところが興味深いです。インターネットでもこうした業者の広告を見かけます。

脚注

  1. BGH Urt. vom 14.12.2018 - V ZR 309/17.