法定相続
法定相続人の相続割合
法定相続人の相続割合について説明しましょう。
配偶者
配偶者が第 1 順位の血族(被相続人の子孫)とともに相続人となる場合、配偶者の相続割合はです(1931 条 1 項)。
ただし、これには重要な例外があります。すなわち、夫婦間で別々に財産を管理し収益することをせず、婚姻生活中に生じた利得を共有することにしている剰余共同制(法定夫婦財産制とも呼ばれます)の夫婦に適用されるルールです。こうした夫婦の一方が亡くなった場合、残された配偶者の相続割合は増やされます(1371 条 1 項)。もともとの相続割合であると足し合わせるとになります。これは、死亡による夫婦間の財産の精算を単純化するための特例です。夫婦として暮らしていた間にの加算に見合う財産の増加があったか否かは問われません。
配偶者が第 2 順位の血族(被相続人の父母とその子孫)とともに相続人となる場合は、配偶者の相続割合がに上がります。剰余共同制の夫婦については先ほどと同じようにが加算され、合計でになります。
配偶者が第 3 順位の血族(被相続人の祖父母とその子孫)とともに相続人となる場合も、配偶者の相続割合はです。ただし、被相続人の祖父母の代襲相続人には相続の権利がありません。このため、祖父母が先に死亡していた場合、祖父母の相続分が配偶者に移ります。すべての祖父母が先に死亡した場合は、配偶者が単独の相続人になります(1931 条 2 項)。
配偶者が第 4 順位以下の血族とともに相続人になる場合には血族の相続権はまったくなくなります。つまり、配偶者が単独の相続人となります。
以上が基本的なルールですが、夫婦が別々に財産を所有することを契約している場合(夫婦別産制)で生存した配偶者が被相続人の 1 人又は 2 人の子と共同で相続する場合は特別のルールがあり、配偶者と子(ら)は等分の割合で共同相続します(1931 条 4 項)。別産制の配偶者の相続割合は本来であればにとどまりますが、子の数が 1 人か 2 人だとそれぞれの子の相続割合の方が配偶者より大きくなってしまうので、それを考慮して設けられた特例です。この特例によって、配偶者と 2 人の子が法定相続する場合であれば、各自がずつ相続することになります。
ただし、配偶者の相続割合に関しては、遺言による相続人の指定、相続の放棄、遺留分請求権にからんで複雑な問題がいくつも存在します。後ほど、遺留分のところで詳しく説明します。
血族
同じ順位の法定相続人が複数いる場合、相続の割合は均等です。被相続人の子が 3 人いれば、(配偶者の相続割合を除いた部分を)均等に、つまりずつ分け合います。嫡出子と非嫡出子の間の区別はありません。被相続人の親(・祖父母・祖々父母)も同じように均等に相続します。
ただし、同じきょうだいでも、父と母の双方を同じくするきょうだいと父と母の一方のみを同じくするきょうだいでは相続の割合が違ってきます。モデルケースで説明しましょう。
被相続人には配偶者も子もいません。両親もすでに他界していました。被相続人には、父も母も同じくするきょうだい A と、父親の先妻との間に生まれた B がいます。それぞれの法定相続割合はどう決められるのでしょうか。
先ほど説明したように、誰がどの割合で法定相続人になるのかは、父と母の家系ごとに決めます。ここが出発点です。
まず、亡き父親の家系を考えます。こちらは、A と B が均等に、それぞれ半分ずつの割合で(代襲)相続します。亡き父親の相続割合はなので、A と B の相続割合はそれぞれです。
他方、亡き母親の家系では A だけが代襲相続します。つまり、亡き母親の相続割合は A がすべて代襲相続します。
この結果、父と母を同じくする A の相続割合はになるのに対し、父と母の一方のみを同じくする B はにとどまります。
この決め方は、日本の民法の計算方法(日本民法 900 条 1 項 4 号)とは違っています。日本では、異母異父きょうだいの相続割合を半分にする、というルールで計算するからです。ちなみに、ドイツでは父と母を同じくするきょうだいを「完全きょうだい」(Vollgeschwister)、いずれか一方のみを同じくするきょうだいを「半分きょうだい」(Halbgeschwister)と呼んでいます。ちょっと不思議な呼び方ですが、実務でもよく顔を出す言葉です。